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紙を超えた紙。越前和紙職人ファミリーの手仕事ーニッポンのヒャッカ第9回ー


和紙と聞いて誰もが思い浮かべるのはまずは障子紙や習字紙、千代紙…あと身近にある和紙といえば和室の襖紙くらいだろうか。

 その襖紙。和室なら必ず目にするその丈夫な紙を、1909年から手漉きで作り続けているのが福井県越前市の長田製紙所だ。ここは日本一、和紙の種類が豊富で、手漉き和紙の産地として知られる越前和紙の地。長田製紙所は昭和の初めに先々代が確立した手漉き模様の技術を継承しながら、襖の柄付けを応用したインテリア和紙や和紙製の小物づくりを行っている。三代目の妻・長田榮子さんは現代の名工と呼ばれ、厚生労働省より表彰を受けるなど、確かな品質を誇る老舗の工場だ。
「襖紙は昔から日本家屋のどこにでも使われてきました。和紙は呼吸しているのです。湿気が多ければ水分を吸収し、乾燥していれば水分を放出し、脱臭効果もあります。使う人と同じ空気を吸い、年を経て少しずつその色や風合いを変えていきます。そんな和紙の魅力を、現在の生活の中に取り入れていけるような、和紙づくりを目指しています」。話してくれたのは伝統工芸士であり、現四代目社長・長田和也さんの娘の泉さん。

工場案内をする泉さん

実際に長田製紙所の生み出す和紙製品は、タペストリー、ランプシェード、オブジェから小物までバラエティ豊か。社長は六本木ヒルズ内の壁面オブジェや、デザイナー桂由美氏のパリコレのドレス用創作和紙まで手掛けるほど。同社の製品のデザインは社長が決めているとのことだが、その仕事ぶりはもはや芸術家さながらなのだ。

ハイカラな榮子さんが生み出した紙袋

 長田製紙所のロングセラー商品のひとつに「EICOバック」という紙袋がある。「EICO」とは泉さんの祖母にして伝統工芸士の長田榮子さんの名前。バックは榮子さんが企画・デザイン・制作を手がけた「EICOブランド」の品だ。白地に黒斜め線、黒地に白水玉模様など、スタイリッシュでモダンなデザインは洗練されていて、40年以上も前からあるときけばなお驚く。
「手漉きの襖紙を1枚ずつ丁寧に手で揉んだ『揉み紙』を使っています。膠をたっぷりと刷毛で塗っては揉む工程を6度繰り返して、乾燥させ、深いシワが独特の風合いを生み出します。毎日使っても1年半くらいは持ちます」と泉さん。完全な防水ではないが、膠の加工により通常の雨程度ならば耐久性はあるという。持ち手部分も和紙の原料となる木の皮を加工した「こうぞ」という素材を使用しているのでしっかりしている。厚い襖紙をこうして加工しているのは長田製紙所ならではのオリジナリティ。「和紙は繊維が長く、からまっているので丈夫なのです。水に濡れたら水分を拭き取って陰干しするなど、水気にだけ注意すればかなり持ちます」。先見の明とは、長田家のクリエイティビティを指すのだと痛感する。

経年変化でむしろ進化!? 揉み紙の魅力

 揉み紙商品といえば名刺入れも。使用当初から1年、2年と使ううちに風合いに柔らかさが加わり、こなれ感が出てくる。しかも、3年ほど経つ頃には新品の倍くらいの量が入るようになるというから、なんだか得した気分すらなれる!持ち主に合わせて表情を変えていく揉み紙の手触りは、なんだかクセになりそうだ。

揉み紙を製造している様子。作業しているのは泉さんの母・千葉(ちよう)さん

 これはもう、紙という概念を超えたベツモノ。
「紙の革」とでも呼びたくなる不思議さ。しかも、手仕事だからシワも風合いも1点モノという特別感がたまらない。
 日本初の藩札(福井藩が発行した紙幣)は越前和紙だったというほどの歴史を誇り、昭和には造幣局の出張所で、百円札や千円札が作くられていた越前。その地は令和になっても、長田製紙所が実証するように進化している。まるで和紙のように今も呼吸しながら。

長田製紙所:公式サイト

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