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老舗の純喫茶が新たな世界を切り拓く。ーヒトとモノのはなし4人目ー


作り手と使い手が出会う場所」を目指してお店づくりをしてきた日本百貨店。店頭だけでは伝えきれない、日本百貨店が愛する「ヒト」が生んだ「モノ」のはなし。

今回、お話を伺ったのは、新宿西口の思い出横丁の一角に佇む純喫茶「但馬屋珈琲店」常務取締役、倉田光敏さん。日本百貨店では、但馬屋珈琲店の人気商品であるドリップバッグを取り扱っている。

5年前に家業であった但馬屋珈琲店に入社した倉田さんは、学生時代にサッカー、野球を経験し、大学在学中にはプロのキックボクサーなったというスポーツマンだ。そんな倉田さんだが、今は老舗の純喫茶の戦略担当として活躍する。半世紀つづく純喫茶が新たなファンを獲得し、ますます盛り上がりを見せている、その魅力を探ってみよう。

半世紀つづく純喫茶が提供する魅力

「今はもうキックボクシングは全然やってないです。でも、最近健康診断でひっかかっちゃったから5年ぶりくらいにジムに通って体を動かさなきゃと思ってます(笑)」

そうにこやかに語る倉田さんは、前職を辞めて家業である但馬屋珈琲店に入社するまではコーヒーを飲む習慣がなかったという。当時はブラックではとても飲むことができなかったという意外な一面も。

「今はブラックも大好きですよ。でも、砂糖とミルクを入れるのもおいしいですよね」と笑う。

但馬屋珈琲店ではお客さまひとりひとりからイメージしたカップでコーヒーを提供してくれる

但馬屋珈琲店は、昭和39年に創業した純喫茶。姉妹店を含め新宿と吉祥寺に5店舗を持ち、これまで50年以上ものあいだ人々に愛されてきた。しかし、倉田さんが入社した当初は純喫茶の廃業率が上がっており、但馬屋珈琲店も2店舗を閉店することが決まっていた状況に焦りがあったという。

入社から最初の1ヵ月は、新たな施策を打ち出すために喫茶店の価値の本質を探るべく、知人や友人に会う度に「どんな時に喫茶店に行く?」と聞いて回った。

「そうしたら、コーヒー自体が好きで行っているという人は約2割しかいなかったんです。あとの8割の人は、一人で落ち着きたいとか、気分転換にとか、人とゆっくり話がしたいとか、喫茶店の空気感や時間を買っている人が多くて。そういう人たちが落ち着けるような、居心地の良い空間であることにはこだわっています」

但馬屋珈琲店に入ると、オープン時から変わらない内装が昭和からタイムスリップしてきたような感覚を起こさせる。店内を見渡すと、小さな干支の置物を見つけた。いたるところに小さな雑貨や骨董品の数々がセンス良く並んでいて、季節ごとに顔ぶれが変わるそうだ。

天井付近を見上げると、毎年ひとつずつ増えるという干支の人形が並んでいる

「内装に加えて、店舗運営をより効率良く進めるために試行錯誤もしてきました。各店舗によっていらっしゃるお客様が違うので、求められるものも違います。そこで、お店の雰囲気だけでなく、提供するメニューや営業時間をそれぞれ変えたり、店舗以外での取引拡大を目指して卸先を探したり。例えば、新宿高島屋さんの地下にある『パンチェーラ新宿高島屋』という本格イタリアンジェラート屋さん。もともと僕がすごく好きで、一緒に何かできないかとお話して共同開発に至りました」

このコーヒージェラートには、但馬屋珈琲店で抽出した特濃コーヒーが50%以上使われており、各店舗でそれぞれ異なるパフェなどのデザートメニューとなっている。但馬屋珈琲店はコーヒーだけでなく、サイドメニューもすべて注文してみたくなる顔ぶれだ。そんな工夫がまた、人々を呼び寄せるのかもしれない。

ヒトとの出会いが温かな輪を広げていく

日本百貨店と但馬屋珈琲店の縁は、倉田さんが問い合わせフォームから連絡をくれた5年前に遡る。

「入社してすぐ、前職で営業をしていた経験を生かして、ドリップバッグを取り扱ってくれそうな卸先へのアプローチを始めました。そのなかで3社目にお取引をしてくださったのが、日本百貨店さん。今は約80社以上と取引がありますが、早いうちからお取引いただけたのは嬉しかったですね。作り手、使い手、売り手『三方よし』の理念は私も大事にしたいと思っていますし、イベントなど『一緒にやろう』と声を掛けていただくと、何とか調整してやりたいという気持ちになります。温かみのある付き合いですね」

日本百貨店各店の店頭では、試飲会をよく実施している。お客様が作り手さんと直接交流できる場であると同時に、店頭でさまざまなお客様とお話しすることは、倉田さんにとっても大きなメリットがあるという。

「商品に対しての反応が直接聞けるので、改良や開発にすぐ反映できます。これはうちのような小さな会社の強みだと思います」

例えば、コーヒーが好きだがカフェインが取れない人からは、「デカフェ(※カフェインを取り除いて減らしたもの)は物足りない」と感じている声が多かった。倉田さん自身、ある時から急に体質が変わってしまい、コーヒーを飲みすぎると気分が暗くなってしまうようになったので、その声に大きく共感したそう。

美味しいデカフェを求めて東奔西走した末、3年前に商品化した但馬屋珈琲店のデカフェは、そうとは思えないほど香り高く深い味わいだ。店頭試飲で、何も言わずにブレンドとデカフェを飲み比べてもらうと、ほぼ100%のお客様がデカフェだと知って驚くという。その深い味わいにファンが増え、今では大変人気な商品だ。

「日本百貨店には珍しいものや、まだあまり知られていない良いものがたくさんあります。今後、特に和菓子とコーヒーの食べ合わせを考えて、セットでお客様にご提案できたら面白いかなと思います。深煎りのコーヒーは、洋菓子だけでなくあんこにもすごく合うんです」

会社としての展望を聞くと、生き生きとした笑顔でこう語ってくれた。

「ネパールの農園の方から正当な価格で豆を買って、もしくは自社で農園の運営をして、一気通貫でやりたいです。コーヒ豆のフェアトレードは多いのですが、自社で農園を運営しているところってまだあんまりないんです。社会的意義もあるし、ひとつの目標です」

自宅で楽しめる但馬屋珈琲店

但馬屋珈琲店のコーヒーの特徴は、深く濃い味。焙煎度合いが深く、豆の挽き方は粗挽きだ。細挽きと比べてお湯との接触面積が狭くなるため、他社の1.5倍程の量を贅沢に使って抽出している。ドリップバッグひとつで一般的には7~10gの豆しか使わないのに対し、但馬屋珈琲店のものは12gの豆を使用している。深煎りは水分量が少ないので、同じ重さでも、より豆の量が多くなるのだ。

人気のドリップパックは、開けた瞬間、香ばしい香りがあたりに広がって思わず深呼吸してしまう。しかも、パックには窒素を充填しているため鮮度が保ち、1年後でも開けたときの感動を味わえる。

「深煎りの香りの方が、よりリラックス効果があると科学的に言われています。それをまず楽しんでいただき、純喫茶にいるような気持ちになっていただけたらと思います。淹れ方はそんなに気にせず、お好みの濃さにしていただけます。うちのドリップバッグはマグカップに浸かる深さがあるので、お湯のかけ方も気にしなくて大丈夫です」

ドリップバッグの他にも、アパレルブランド『ADAM ET ROPE(アダムエロペ)』とコラボした、ロゴ入りのオリジナルマグカップやグラスも展開している。さらには、2021年12月末まで使えるお得なコーヒーチケットの販売や、なんとVRで本店にいるかのような体験ができる「但馬屋珈琲店VR」も始まった。

50年間受け継がれてきた老舗の居心地の良い空間と、倉田さんが切り拓くワクワクする体験。それが融合した時、また新たな感動が生まれてくる。実際の店舗を訪問するその日を心待ちに、今はゆっくり「おうちで純喫茶」を楽しんではいかがだろうか。

但馬屋珈琲店:公式HP
アダムエロペ「巡る純喫茶」

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